1日目 御殿場経由で静岡へ

 久しぶりに旅に出たくなった。行き先は決めていた。なぜ走るのか。その先に道が続いているからだ。ならば、道の終わりまで行ってみようじゃないか。九州最南端、佐多岬まで。ちなみに、日本最北端の宗谷岬は道の途中にあるので、行き止まりではない。だから、行き止まりで行き着く佐多岬を選んだ。出来るだけ荷物を減らしたいので、小さなバッグに工具やスペアタイヤ、
着替えのジャージや雨具、自転車乗らない時の服と靴を詰め込む。

 かなり前から日程決めて計画していたので、こういう事かあるかもしれない、という事は理解していたつもりだ。だが、実際になってみるとやっぱり嫌なものだ。天気予報によると、しばらくは雨続き。少なくとも最初の数日は好天には恵まれそうにない。諦めて出発する。途中のコンビニで朝ごはんを買い、先へ進む。都内の信号の多さはいつ来ても辟易する。なかなか進まず時間ばかりが過ぎる。都心部を抜けると少しペースが上がった。こんな調子じゃ、いつ着く事か。何とか明るいうちに今日の目的地に着きたいものだが。

 最短ルートという事で国道246号線を選択したが、予想通りの走りにくさだ。自転車通行止めの区間も多い。厚木から秦野経由で御殿場方面へ向かう。少しずつ微妙に上っていく。何となく調子が上がらない。左脚のふくらはぎが攣りそうだ。まだ合計で1000m程度しか上ってないのに?やばい、攣る!思わずクリートを外して、右脚だけでペダリングする。当然、全然スピードは出ない。耐えかねて、攣りそうな部分への負担を減らすべくクリート位置を変更し、踵よりで踏むようにする。少しマシになった。

 さらに上り続けるが、やっぱりダメ。ちょっと力を入れると攣りそう。左足をかばって踏んでいたら、右脚ばかりに負担をかけてしまい、両脚ともに攣りそうな状態。休みながらのんびり走る。全然進まない。御殿場付近はほぼ平坦なので、脚を休められる。その先の469号線の上りは、勾配きつかったけどちゃんと踏む事が出来た。晴れてれば富士山が綺麗なはずだが、こんな天気では展望は望めない。

 何とか坂を上り切ったら、あとは下りと平坦。だが、雨がだんだんと強くなり、ついには土砂降りに。路面を流れる雨水は川のようになり、完全ウェット。当然の事ながら楽しめない。とにかく慎重に走るしかない。止まれる速度を維持しながらのんびり下ると富士宮。さらに下って国道1号線に合流して由比付近へ。ここは東海道を走るサイクリストの難所だ。何しろ、自動車専用道路と山道しか選択肢がないのだから。天気良ければ山もありだが、こんな天気では楽しめない。なので海沿いの自転車道へ。

 由比を抜けてしばらく進むと、ついにガーミンのバッテリーが切れる。予想以上に時間がかかったせいだな。ここから今日の宿泊地の静岡駅までは25kmくらいか。あと少しだと思った時、突然雨が強くなった。土砂降りの雨の中を淡々と走る。もはや路面が見えない程の水たまりの中を進む。周りに気をつけてひたすら走る以外に出来る事はない。ボロ雑巾のようになりながらも、何とか静岡駅付近の本日の宿に無事到着。走行距離は210kmくらいかな。

 晩飯は静岡駅の駅ビル内の寿司屋で本まぐろ中トロ丼。脂はのってるけどさっぱりとした味わい。明日も雨らしい。とにかく、前に進むしかない。