エタップ参戦記(そしてアルプ・デュエズへ)

ストレッチをしたり、いろいろやってみるが、一向に良くはならない。アルプ・ディエズの麓まではほとんど下りか平坦で10km。とりあえずそこまでは走ろう。

何とか自転車にまたがり、痛みをこらえながら、出来るだけギアを軽くして何とか走る。軽く回しているうちに、少しずつ筋肉がほぐれてきたのか、少しずつ足が動くようになってきた。全然速くは走れず、後ろからくる人たちに抜かれまくるが、もう気にならない。とにかく少しでも前へ。

最後の関門を通過。歩いて上れるくらい制限時間には余裕がある。行けるところまで行ってみよう。上り口の10%を越える坂に挑み始めると、やはり太ももの痛みがきつい。それでも、何とか耐えて回し続けた。

奇跡でも起こったのだろうか。しばらく進むうちに、突然太ももの痛みが消えた。これならゴールまで走り切れるかもしれない。諦めるなという事か。そう思い始めると、楽しめる余裕がある出てきた。観客のアーレーという声援に手を上げて応えると、喜んでくれる。勾配は10%を少し切るくらいだが、また足が動かなくなるのが怖くて踏む事はできない。なのに上っているのが楽しくてしょうがない。走れる喜びとでもいうのだろうか。

周りの人達や景色を見る事も出来るようになり、残り距離を数えながら眈々と上る。途中、ラルプ・ディエズの上り口で追い抜かれたSさんを抜き返し、とにかく前へ。頂上に近づくにつれて観客の数も増えてくる。

テレビ中継で何度も見ているあのトンネルをくぐると、頂上はあと少し。しばらく走るとほぼ平坦になり、ゴール付近も勾配はゆるい。ここからなら、思い切り踏んでもゴールまで足はもつ。アウターにぶち込み、思い切り加速。一気に走りきってゴール。

ゴール後に足を着くと、やっぱり太ももが痛くてたまらない。立ち止まるとヤバイので、完走の記念メダルと受け取ると、自転車を立てかけられそうな場所を探す。よほど嬉しそうな顔をしていたのか、みんなが祝福してくれるのが分かる。自転車を置いて座り込み、渡欧する前に予定していた通りの言葉を、ツイッターでつぶやいた。アルプ・デュエズなう!!