エタップ参戦記(テレグラフを越えてガリビエへ)

 モダーヌの外れまでバスで移動し、そこからスタート地点へ。あたりはまだ薄暗く、半袖では肌寒い。ウィンドブレーカーを着込み、走り始める。参加者は約1万人。沢山の人達がモダーヌへ向かって走っている。さすがヨーロッパの人達は体つきが大きい。後ろに付くと楽だ。

 スタート地点へ着くと、ものすごい人の列。アナウンサーが4ヶ国語くらいでうるさく捲し立てている。集団の付近は全く見えない。そのうち、スタートするが、人数毎に区切っているため、いつまで経っても動かない。結局、最初の人がスタートしてから1時間以上経過してからようやく出発。

 スタートのゲートをくぐると日本のレースでも聞き慣れた計測チップを読み取るピッという音が。いよいよレースが始まった。序盤は下り基調。走り慣れない右側通行とロータリーに戸惑いながら進む。周りの人達がガンガン飛ばす。集団はやや神経質だ。慎重に走っていると、あっという間にガリビエの上り口に。

 まずはテレグラフ峠へ向かう。勾配は緩め。そこそこのペースで周りの人達をひたすら抜き続けながら進む。上るにつれて、ツール・ド・フランスのテレビ中継で見慣れた光景が目の前に広がる。だが、感動に浸る余裕なんてない。とにかく上り続け、ようやくカテゴリー1級のテレグラフを通過。写真をとってテレグラフなうとつぶやき、送信したら圏外だった。残念。

 若干の下りを挟み、いよいよガリビエを目指す。かなり抑えて走ったつもりだったが、予想以上に右足の調子が良くなく、無理をすると右足のふくらはぎが攣りそうだ。ペースを落とし、完全にツーリングペースで上る。どこまでも続く九十九折の道と、どこまでも続く自転車の列。他では見らない光景。広大な景色の中を淡々と進む。場所が変わっても、上りはきついという事に変わりはないという当たり前の事を実感する。なんとかガリビエに到着するも、ここも圏外でつぶやけず。写真だけ撮り、ウィンドブレーカーを着て下り始める。

 やや向かい風なのか、思ったほどスピードが出ない。最初は勾配が急だが、それ以降はゆるくなる。もっと飛ばす事は出来るが、ここで怪我をしたくないので安全な速度で下る。それでも、予想外のラインをとる人やトンネルで減速する人などがいて、安心して下れる状況ではなかったが。

 ボトルが一本空になったので、途中の休息所で補給。大した食べ物はないなあ。日本のロングライドのエイドステーションの方が、よほど美味しいモノを食べられる。追いついて来たSさんと少し言葉を交わして、先に下る。下りもほぼ終わりに近づいた頃、ペダルを回そうと足を動かすと今まで経験した事のない種類の痛みが両太ももを襲う。とても走れるような状況ではなく、路肩に止めて地面に座り込んだ。ふと気がつくと、前には救急車が止まっている。時間はまだまだあるのに、ここでリタイヤなのか。諦めかけている自分がそこにはあった。